Beijing

新・朦朧主義

2014/10/12–11/30

この度、東京画廊+BTAP(北京)は10月12日(日)より、『新・朦朧主義』展を開催致します。

昨年に続き二回目の開催となる『新・朦朧主義』展は、現代中国水墨画研究の第一人者である皮道堅氏をキュレーターとして招き、中国、香港、台湾と日本から作家20名を選定しました。参加アーティストは王舒野(中国)、徐冰(中国)、杭春暉(中国)、曾健勇(中国)、蔡广斌(中国),呉強(中国)、朱建忠(中国)、葉剣青(中国)、泰祥洲(中国)、丁蓓莉(中国)、文鳳儀(中国香港)、林東鵬(中国香港)、林于思(中国)、邵文歡(中国)、沈勤(中国),劉美育(中国台湾)、張天軍(中国)、張詮(中国)、石井友人(日本)、高橋淑人(日本)、SHIMURAbros(日本)です。また本展覧会は北京798芸術地区の協力を得し、同社が所有する1200平米のギャラリースペースを第二会場として使用し、昨年よりも規模を拡大して開催致します。

「朦朧」という言葉が絵画史の文脈に導入されたのは明治期になります。当時、岡倉天心の思想に共感した菱田春草や横山大観などの日本画家は、色彩豊かな西洋絵画を参照し、伝統的な手法に縛られない新しい表現を模索しました。日本画の伝統である線描を徹底的に退け、色調が混じり合う淡い「ぼかし」を画面いっぱいに広げることにより、空気や光の質感などの自然描写に留まらず、観念や情感など東洋的な精神世界をもイメージ化することを試みました。当時の批評家からは西洋画法の稚拙な折衷と厳しく批判され、濃淡やぼかしを強調した作品群は「朦朧派」という蔑称を与えられます。しかし結果的に、彼らの革新的な表現はその後の日本画の発展に多大な影響を与えることになります。

光りや大気の移り変わりを描くことは日本だけでなく、J.W.ターナーや印象派を始め、朦朧派と同時代に栄えたアメリカのトーナリズム(色調主義)など欧米でも広く実践されていました。20世紀初頭、岡倉天心や横山大観が渡米した際、彼らの作品が現地で大変な人気を博したことはトーナリズムの繁栄が背景にあります。また、中国の宋・元王朝時代の山水画を源流とする東アジアの絵画表現にも着目すべきです。このように、それぞれ独自の歴史と風土をもった文化圏が絵画において交錯する様子に目を向け、現代絵画の表現を世界的な観点から捉え直すことが『新・朦朧主義』展の主旨です。


本展開催にあたり、皮道堅と中国美術館(北京)のキュレーター魏祥奇のエッセイを収録した展覧会カタログを出版致します。また10月11日(土)には北京中央美術学院で関連シンポジウムを開催致します。パネリストは皮道堅、張志揚、呉洪亮,王璜生、王彦伶、田畑幸人,魏祥奇の7名です。オープニング・レセプションは10月12日の午後3時より開催致します。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げております。

吴强

1977年福建省長汀生まれ。
2000年に中国美術学院水墨画専攻卒業。卒業作品『雲壑』が学内において優秀賞を受賞し、祟麗奨学金を獲得。同学院のパーマネントコレクションとして収蔵されています。
2003年には『空山新雨後』が第二回全国中国画展で優秀賞を受賞。
2005年に中国美術学院中国画研究科修士課程を修了し、現在は浙江大学芸術学院に勤務。

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SHIMURAbrosはユカ(1976年生まれ。多摩美術大学卒後、英国セントラル・セント・マーチンズ大学院にて修士号を取得)とケンタロウ(1979年生まれ。東京工芸大学 映像学科卒)による姉弟ユニットです。平成21年度文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞受賞。その後カンヌ及びベルリン国際映画祭での上映をはじめ、日本国内外の美術館で作品の展示を行い、近年では恵比寿映像祭への出品や、NTU CCA Singaporeのレジデンスプログラム参加など、活動の場をさらに広げています。2017年にはArtReview Asia誌のA Future Greatsに選ばれました。平成26年度ポーラ美術振興財団在外研究助成を得て拠点をベルリンに移し、現在はオラファー・エリアソンのスタジオに研究員として在籍し活動しています。最近では、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品の第30作の制作作家に選出され、第二次大戦中に「命のビザ」を発給した杉原千畝を起点に、現在も続く難民問題について考察した映像作品『Butterfly upon a wheel』(2022年)を制作しました。

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王舒野

王舒野は1963年中国黒龍江省生まれ。1989年に北京の中央工芸美術学院(現・清華大学美術学院)を卒業し、同年に制作した卒業作品で中国政府経済産業省の「金龍騰飛賞」最高賞を受賞しました。その後、1990年に来日するも、2001年の個展開催に至るまでの10年間作品発表を行わず、芸術の精神的探求に日々没頭します。2001年の鎌倉での個展開催を皮切りに、主に東京と鎌倉で作品を発表し、2009年には池田20世紀美術館で回顧展『肯定の目光に・王舒野の世界展』を行います。現在も鎌倉を拠点に、強靭な探求心に導かれた作品制作を続けています。
無数の筆触がキャンバスを覆う王の作品は、ストロークの集積によって深遠で静謐な景観を現出させます。その視覚空間は認識の対象として捉えられる以前の世界そのものであり、大画面を前にした鑑賞者は、現在の時の拘束を離れ、流転する時空世界を発見するのです。主に墨や鉛筆を用いていた王は、2007年に素材を油彩へと移行させ、自身の創造世界に新たな展望を示しました。作家の視覚は輪郭線に従うことを止め、まさに物質と触れるような距離にまで接近しています。

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徐冰は、中国において実在しない偽漢字を約4000文字創作し、それらを木片に刻みあたかも本物の印刷物のように見せかける作品で知られています。展覧会ではその方式で作成された本や巻物を使用してインスタレーションを行ってきました。1991年にニューヨークに渡ってからは、アメリカ人にも読めるアルファベットを使用した偽文字を創作し発表し、高い評価を得ています。
徐冰は共働きの両親のもとに育ったため、図書館に勤める母の影響で、字が読めないうちから文字を毎日見て過ごした、と言います。その後、天安門事件を境に旧漢字から新漢字に変更されたり、またNYに渡ってから英語を話すようになったりする過程で、言葉やコミュニケーションに強く関心を持つようになりました。それらの経験は、作品制作に強く影響しているそうです。

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葉剣青

葉剣青(Ye Jian Qing)は1972年中国南部の都市、寧海市生まれ。1998年に中国中央美術学院壁画専攻を卒業、2007年に同大学院造形類油絵専攻にて博士号を取得。北京を拠点に制作活動を行っています。大学の卒業作品<移民傾向>が学内において優秀賞を受賞し、岡松家族奨学金を獲得しました。現在は中央美術学院壁画学部にて教鞭を執ります。

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石井友人

1981年生まれ。武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。自ら撮影した写真や既存のイメージをソースとして絵画化し、情報の受容装置としての視覚を問題化した作品を発表している。近年は観葉植物をモチーフとした油彩とUVプリントによる、天地反転したダブルイメージの絵画を制作し、都市空間と不可分な人間の記号的認識を変容させる試みを行なっている。アーティスト活動とともに「わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー」などキュレーション活動も展開している。

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