Tokyo

不思議の国のアート

1967/12/11–12/26

出品作家:田中栄作、田中信太郎、中西夏之、野中ユリ、八田豊、平田洋一、平賀敬、福岡道雄、福田繁雄、堀内正和、前田常作、松田豊、三木富雄、宮城輝夫、 宮脇愛子、 向井修二、 村上善男、 モクボ明、 柳原良平、山口勝弘、山本圭吾、湯原和夫、ヨシダミノル、吉田稔郎、吉原通雄、吉村益信、和田誠、赤穴宏、赤瀬川原平、飯田昭二、伊藤隆道、伊藤隆康、井上武吉、今井祝雄、今中クミ子、岡崎和郎、岡本太郎、岡本信治郎、桂ユキ子、聴涛襄治、菊畑茂久馬、久里洋二、小島信明、昆野勝、斎藤義重、篠田守男、篠原有司男、白髪一雄、新宮晋、杉浦康平、鈴木慶則、関根美夫、高橋秀、高間惣七、高松次郎、多田美波、玉置正敏

岡本信治郎

岡本信治郎(1933-2020年)は都立日本橋高等学佼を卒業後、独学で水彩画をはじめました。1960年代に入り、簡潔な線描とアクリル絵の具の明るい色彩を用いた画風を確立します。1962年、1963年にシェル美術賞展で佳作、1964年に第1回長岡現代美術館賞展で大賞。以降、東京ビエンナーレ、現代日本美術展など国内外の展覧会に出品。近年では、ポップアートを世界的な文脈で紹介する「International Pop」展(ウォーカーアートセンター、ダラス美術館、フィラデルフィア美術館を巡回)に出品されるなど、戦後日本の一傾向を示す美術家として、国際的な評価が高まっています。東京画廊での第1回個展は 1966年に行っています(『虫 世界―あるいは大群の風景』)。また制作の傍ら、凸版印刷株式会社のアート・ディレクターとして勤務し、81 年までデザインの分野で活躍した一面を持ちます。
岡本はその長いキャリアにおいて、異なるスタイルによる多くのシリーズを展開しました。主題は下町の大衆文化から美術、宗教、歴史など多岐にわたります。作品は綿密なスケッチをもとに生み出され、感情を排した筆遣いによる形象が賑やかに画面に配置されます。リトグラフやシルクスクリーン、立体絵画、オブジェと、同一のイメージで色・サイズを違えてヴァリエーションを作るのは、「おかしんワールド」の真骨頂であり、展示スペ ースを圧巻のスペクタクルへと転じさせます。明るい祝祭的な画面空間には、観客を楽しませながらも迎合しない、台風の目のような静けさがあります。

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関根美夫

関根美夫は和歌山県生まれ。自由美術協会を通じて吉原治良(1905-1972) と出会い、1954年に具体美術協会の結成に加わります。1955年に第七回読売アンデパンダン展に出品、1958年にはミシェル・タピエ(Michel Tapié, 1909-1987) が作品選定を行った「新しい絵画世界展/アンフォルメルと具体」(大阪で開幕ののち東京、京都、広島、長崎に巡回)に参加しています。1959年に具体美術協会の脱退とともに、東京に移り住んだ関根は、第15回読売アンデパンダン展(1963年)で初めて「そろばん」の絵画作品を発表し、以来生涯にわたって「そろばん」「門」「貨車」「富士山」のシリーズを軸に制作を展開しました。その他の主な展覧会に「現代美術の動向-絵画と彫塑-」展(1964年、京都国立近代美術館)、「第二回長岡現代美術鑑賞」展(1965年、新潟県長岡市)、「1960年代:現代美術の転換期」(1981年、東京国立近代美術館、その後京都国立近代美術館に巡回)などがあります。また、1952年に毎日芸術賞を受賞しています。

「そろばん」は関根の代表的シリーズで、さまざまな構図や色彩を展開しながら、晩年に至るまで多数の作品が生み出されました。そろばんの珠は、第一にその可動性によって、第二に数を示すというその記号性によって、幾何学的構成の興味深いモチーフとなります。実際、珠の配置で制作年月を読み取らせるなど、関根の作品がもつ数的な謎解きは、絵画を抽象性へと大きく傾けるものです。その一方で、そろばんというオブジェの抽象性を具体に即して画面に示すことは、伝統的なイリュージョンの作用によらないリアリズムの達成として理解することも可能です。

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