Tokyo

北川宏人  ポスト・ニュー・タイプ2008

2008/10/1–10/25

オープニングレセプション:
2008年10月1日(水)|18:00~20:00

東京画廊 + BTAPでは、テラコッタで人物彫刻を制作している北川宏人(きたがわひろと)による個展『ポスト・ニュー・タイプ2008』を開催いたします。東京画廊 + BTAPでは初めての個展となる本展覧会では、等身サイズ2点、小品5点の新作を中心に、FRPやブロンズなどのエディション作品も発表されます。

北川宏人は1967年滋賀県生まれ。1989年に金沢美術工芸大学彫刻科を卒業後、マリノ・マリーニやジャコモ・マンズーなどのイタリア具象彫刻に憧れてイタリアへ渡ります。14年間にわたるイタリア滞在中にテラコッタの特殊制作技法と出会い、素材と自分との関わりをそのまま作品として形にできるテラコッタの技法に衝撃を受け、その後は一貫してテラコッタにアクリル彩色という技法で制作しています。近年は金沢21世紀美術館や国立近代美術館工芸館をはじめとする国内外の美術館やギャラリーで作品を発表しています。

現在は東京で活動している北川が2007年夏から制作しているのは「今どきの若い人」です。長年の海外生活で外から日本を見続けてきた北川は、日本という国が将来どうなっていくのだろうかというところから、未来を作っていく若者がどういう思考で生きているのかについて興味を持つようになりました。日々普通に見かける若者たちに対し北川は、何か心に疲れをかかえているような、そんなイメージがあるといいます。ニュースなどで繰り返されているいじめ問題や引きこもりなどといった現代特有の事象を掬いあげ、北川宏人というフィルターを通して直観的に形にした結果、猫背や細身の体、焦点の定まらない瞳などといった現代日本の若者を象徴するような表情を見せています。

そのような社会的関心がある一方で、北川の今年の作品は、テーマ性よりも素材を重視していると言います。粘土のタッチとテラコッタの素材感をより強調し、形・タッチ・色・どんな雰囲気の人かいった形象を重視し、北川自身が作りたいと思う人を作った結果、不安や不満を抱える若者の胸中がより伝わってくるかのような作品となっています。また、北川の最近の作品には、<山田俊彦>や<花房みどり>といった実存する人物ではないものの、具体的な名前が付けられています。これは漠然とした若者や北川が以前発表していた「ニュータイプ」シリーズといったものよりも、日本人の進化した「かたち」をより鮮やかに映し出したいということがきっかけとなっています。「ニュータイプ」シリーズでは鋭い目付きとピンと伸びた背筋が特徴でしたが、ニュータイプ以降の作品はテーマを絞っていないため、人物はより多様化し、色々な表情を見せてくれます。


「最近の作品の傾向は、より素材派、より「モノ」としてのクオリティーアップに向かっているような気がする。テーマやコンセプトもあまり考えなくなった。 三十の頃は欧米的思考で展開する現代美術の大きな文脈に少しでも乗せていかなくてはと頑張っていた気がするが、四十を過ぎたせいか最近はもうどうでもよくなったというか開き直った、というか腹を括った。作品一体一体に一球入魂、一発一撃。インスタレーションで空間演出するのではなく、作品一体の力で空間すべてを制覇できるようなものが作れればと思う。現代美術の大きな流れからは一歩離れた自分だけの孤島を目指したい。」(2008年9月北川宏人)


展覧会カタログ 掲載評論:
不動美里『一人称現在形の彫刻、或は境界の自己像』
金子賢治『北川宏人論-「彫刻VS陶芸」を介して』

北川宏人

北川宏人は1967年、滋賀県生まれ。1989年に金沢美術工芸大学を卒業後、マリノ・マリーニなどの当時のイタリア具象彫刻家に憧れ単身で渡伊。アカデミア美術学院ミラノ校とカラーラ校で学び、テラコッタの古典的彫刻技法を習得します。帰国後は一貫してテラコッタを使用した彫刻を制作し国内外の美術館とギャラリーで作品を発表。近年では金沢21世紀美術館のコレクション展に出展するなど原始素材である土の素材感にアクリル絵具で生彩を与え、現代に生きる人間像を表現しています。

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