Tokyo

江見絹子

2026/1/17–2/28

この度、東京画廊+BTAPでは、2026年1月17日より「江見絹子展」を開催いたします。本展は、1961年に開催して以来の当ギャラリーでの個展となります。

江見絹子(1923−2015)は兵庫県明石市に生まれました。高校卒業後、神戸市の美術研究所に通い、1948年に兵庫県美術家同盟の会員になります。1949年に第4回行動展に初入選し、翌年には奨励賞を受賞、中央画壇での活動に専念するため、横浜市山手に転居しました。1952年の第7回展で行動美術賞を受賞し、翌年には初の女性会員に推挙されるなど、一気に頭角を現します。1953年末から2年間アメリカとフランスに滞在し、帰国後、抽象絵画の作品群を制作します。1962年には、日本人女性として初めてヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展に出品を果たしました。また、神奈川県女流美術協会の創立に携わるなど、女性アーティストとして日本の前衛美術の黎明期から精力的な活動を展開しました。

本展で展示する作品は、江見が1960年代のはじめに制作した、物質性を強く示す絵画です。江見は、1957年以降に制作した幾何学的抽象絵画を文字通り解体し、それを材料に新作を手掛けました。たとえば、旧作を自邸の庭の池にしばらく浸して絵具を剥離し、それを篩にかけて粒子を揃え、テレピンで薄めたものを下地とする手法などを用いています。ときには画面の向きを変え、ヘラ等で凹凸をつけながら地を盛り上げ、表面を掻き削るなど、絵画の物質性と描画行為の痕跡を強く感じさせる作品群です。表層の造形を超えて、偶然生まれるマチエールを重視する姿勢は、同時代の斎藤義重などと通じるものがあります。

江見の作品は現在、神奈川県立近代美術館 葉山で開催中の『没後10年 江見絹子—1962年のヴェネチア・ビエンナーレ出品作品を中心に—』で展示されているほか、12月16日から東京国立近代美術館で開催される『アンチ・アクション—彼女たち、それぞれの応答と挑戦』展でも、戦後期に目覚ましい活躍を見せた女性美術家の一人として紹介されます。作品の主な所蔵先に、神奈川県立近代美術館、東京都現代美術館、横浜美術館、奈良県立美術館、姫路市立美術館、宮城県立美術館、高松市美術館などがあります。

皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

本展開催にあたり、荻野アンナ氏、および籾山昌夫氏より多大なご協力を賜りました。謹んで感謝申し上げます。